ビジネス : ウォッチングパーティとNYでのチャリティ

ウォッチングパーティとNYでのチャリティ

ウォッチングパーティとNYでのチャリティ
最後の討論会が幕を閉じた後、ウォッチングパーティ会場の大きなスクリーンは「Stronger Together」と書かれたブルーの画面に代わった。俳優・歌手で有名なジョン・カルロ・カネラ(Jon Carlo Canela)氏がステージに現れると若い女性たちからの黄色い声援が飛んだ。

彼の親はキユーバからの移民で、彼自身はマイアミ生まれの21歳、ヒスパニックだ。司会者として、まずは、民主党ネバダ州の政治家ルーベン・キーウェン(Ruben Kihuen)氏を紹介した。キーウェン氏は、8歳の頃にメキシコから移民として来て、両親が苦労しながら育ててくれたなど自分の生い立ちに続き、移民支援に手厚いヒラリー氏が大統領になるべきだと彼女への投票支援をスペイン語で熱く語った。このようにラスベガスがあるネバダ州は、メキシコから近いことや観光都市でもあり、ヒスパニックが多く住む場所なのだ。

続いて、女優でシンガーソングライターのアンジェリカ・マリア(Angelica Maria)氏が呼び込まれ、メキシコのマリアッチで有名な ロス・ティグレス・デル・ノルテ(Los Tigres Del Norte)らによる演奏と彼女の歌によって会場を盛り上げた。

マリア氏は、以前6月に私がカリフォルニアの予備選を手伝いに行った際、いくつかの演説会場に来ていたので覚えていた。その時は歌うことなどはなく、ヒラリー氏への想いと投票を会場の有権者に訴えただけであったので、歌手ということは後で知ったのだった。

女優さん特有の華があり、彼女がステージに出てきただけで陽がさしたように明るく場が和む。彼女が歌い終わると「オートロ(もう1曲)」と大合唱になったほどだ。彼女が降壇した後、ロス・ティグレス・デル・ノルテ(Los Tigres Del Norte)の演奏が続き、人々は総立ちとなり、音楽に合わせてその場で歌い踊った。

その頃、「Love Trump Hate」「Stronger Together」などいつものようにA3サイズのサインが配布され始めた。遠くにパトカーの先導に続きライトを点けた大きな乗用車が何台にも連なってこちらに向かってくるのが見えた。

「ヒラリーだ!」

人々は一瞬踊るのを止め、車を目で追いながら歓声を上げた。そして音楽と共に興奮状態は続いた。ある老人男性がステージに設置された演台の前に誘導された。彼はメキシコを代表する歌手のヴィンセンテ・フェルナンデス(Vicente Fernández)だ。絶大なる人気をほこり尊敬される彼は、静かに、しかしながら強く、ヒラリー氏への投票支援を訴え、エンターテインメントの時間は終わった。

それと同時にセキュリティの数が増え、ヒラリー氏の登壇を今か今かと待つ私たちの期待に応えるように、彼女とビルが現れた。会場内は、鳴り止まない拍手と歓声に沸いた。

彼女がマイクの前でいつものように投票日までの支援を訴えた後、ステージに並んだ歌手やボランティアたちをねぎらうヒラリーとビル。お開きになった後も、2000名を超えた観客に会場のボルテージは下がることなく、しばらく喧噪に包まれていた。

さて、翌朝、それぞれの候補はすでに次へと動き出していた。トランプ氏は自家用ジェットで激戦が予想されているバトルステイトのひとつ、オハイオ州に来ていた。昨晩最後の質問「大統領選挙の結果を受け入れるか」に明確な回答をしなかったトランプ氏。こんなことは大統領選の討論会史上、類を見ないことであった。メディアは、オハイオ州で行われる演説会で何が語られるのかと、生中継の中、評論家たちと注視していた。

現地時間の昼12時(ラスベガスは朝9時)から始まったトランプ氏の演説会の冒頭、彼は、「この大統領選が終わって、もし、自分が勝ったら、その結果を受け入れる」と発言した。メディアは、その状況を昨晩の討論会の模様と一緒に一斉に報道した。私は、明け方まで再放送を見ていたので、眠たい目をこすりながらその中継をライブで見ていた。

そして、討論会から24時間経たないうち、翌日の夜に、ニューヨークで行われるチャリティパーティでトランプ氏とヒラリー氏の両名は再度顔を合わせることになる。多くのキリスト教徒で構成されたこのチャリティ会場では、ステージにひな壇が作られ、ヒラリー氏とトランプ氏は、ニューヨーク大司教ティモシー・ドーラン枢機卿を挟んで両隣に座っていた。

パーティの終わりに二人のスピーチが、それぞれ行われた。トランプ氏は、昨晩に続きメディアの偏向報道について、「オバマ大統領のミッシェル夫人は、本当に素晴らしいスピーチをした。私の妻のメラニアもまったく同じスピーチをしたのに、メラニアが非難されたのはなんでだ! しかもメラニアにはまったく罪はないのに」と、会場の笑いを誘った。メラニア夫人をその場で立たせて、「あーこの後、帰宅してからが大変だ。メラニアにはこのこと(スピーチで話題にすること)を言ってなかったから。大丈夫かな?」とその場で妻の許しを請い、観客には大うけしていた。これがトランプ氏の一番のナイスジョークであったが、後のスピーチは、このチャリティ始まって以来となるブーイングの嵐が起こるほどの“ナスティ”(汚い・ひどい)なものであった。

次にクリントン氏のスピーチとなった。彼女は、「私は、ユーモアのセンスがないと陰で言われているのを知っている。でも私は、本当は退屈な人間ではない(愉快なの)」「今日は(いつものパンツスーツではなく)、フォーマルなパンツスーツで来ました(他の女性たちはイブニングorカクテルドレス着用)」「トランプ氏のご指摘の通り、普段は高額な講演料も今日は無料」などと自虐的に言い、時にはジョークで笑いを取りながら、皮肉たっぷりのスピーチでお返しをした。

私を含め、その夜の生中継を観ていた人にも、画面を通して、その会場が何度も凍りつく感じが伝わったと思う。“もし私が彼女のスピーチライターであったら”と少し胸が痛かった。祈るような気持ちで画面を見つめていたら、討論会ではスルーされた“握手”が両者で交わされ、お開きとなった。

10月24日より、ところによって期日前投票が始まる。11月8日の大統領選の投票日、その歴史的瞬間まで全力で応援し、見守っていきたいと思う。

ロス・ティグレス・デル・ノルテ

ロス・ティグレス・デル・ノルテ

ビルとヒラリーが登場

ビルとヒラリーが登場

ディベートでは実現しなかった握手!

ディベートでは実現しなかった握手!



江木園貴(えぎ そのき)
国際イメージコンサルタント。大分県出身。米国大学留学後、米国テレビ製作会社日本支局入社、TV制作プロデューサー、MC&アナウンサーを経験。その後、衛星放送会社、音楽配信会社などの広報・PR/IRを経て、イメージコンサルティング会社、(株)プレゼランスを設立。アメリカの大学に留学時、偶然見たビル・クリントン氏の大統領選挙の演説の様子に感動し、大統領選挙並びに印象を良くすることに関して研究をはじめ、ロンドンやNYにてカラー、ファッションやヘアメイク、メディアコミュニケーションをはじめとするイメージコンサルティング全般を修得。アメリカにて国際イメージコンサルタントの資格取得。人生を変えるきっかけとなったクリントン氏に20年を経て恩返しするべく、1年間日本での仕事を休み、選挙ボランティアとして活動中。NY在住。